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「ユリイカ」ちょいネタバレ

北九州サーガの2番目の作品、「ユリイカ」を鑑賞しました。

折しも「斎藤工務店」で、青山真治さんの手による3部作のこと、そして配信中の「最上のプロポーズ」に参加できた喜びが記事になっていて、それを読んだばかりでした。

 

この3部作、北九州だけが舞台になっているわけではないのですけど、青山さんが北九州の門司のご出身であることや、北九州の地名、ロケ地、北九州にゆかりの登場人物、内容などを含めた上で北九州サーガと呼ぶのだと思います。


私は「Helpless」をまだ観れてないのですが、3本がつながっているんですよね。

同じ登場人物が出ていたり、エピソードが他の作品にも出てきたり。
1本ずつが独立した作品なのだけど、3本とも観て初めて見えてくることもたくさんあるのだろうと思っています。

 

「ユリイカ」の素晴らしいところは、というよりも、青山さんの作品全般に言えるのでしょうけれど、登場人物ひとりひとりに対しての愛情の注ぎ方。
見守る視線がとても暖かいんですよね。
バスジャックが冒頭で出てきますが、その犯人に対してさえも、きちんと愛情を注いで描いている。薄っぺらな感じでなく、冒涜することもなく(ラストシーン近くでそれがわかります)描かれているのです。

 

そして、宮﨑あおいさん演じる梢ちゃんが、あるものを投げるシーン。
この作品の中で、一番の名シーンだと感じました。
他にも数えきれないほど、心に残った場面があります。

 

「ユリイカ」ですが、その不思議な色調が目をひきます。
一見セピア色なのです。ですが、セピアというわけでもなく何か専門的にそういう「焼き方」があるのだそうですが…


泥水のような色の世界の中に、響くのが蝉の声。
目に映るのは独特な色なのに、脳内にフラッシュバックするのはカラーの映像だったりするので、観ながら軽く混乱します。
映像の中の建物やバスの車体カラーも、ふだんの生活で見慣れているせいかも知れません。
スクリーンと観る側が遮断されている印象も強く、前半は息苦しさを覚えたほどです。

「色がよみがえる」終盤でも、結構泣いたのですが、役所広司さん演じるバスの運転手と宮﨑あおいさんと実兄の将さんの兄妹との心の交流。

そこに絡んでくる従兄弟の青年や周囲の人々。
福岡のちょっと荒っぽいけれど、懐かしい方言のセリフ。

何でもない場面に、自分の中のいろいろなものが共鳴して、たくさん泣きました。

 

閉ざされた世界と、まぶしすぎる外界とのせめぎあい。
見つからないというもどかしさ。答えを見つけたときの開けた感覚。
「ユリイカ」には、そんなたくさんのことが詰まっています。


3時間を超える長編ですが、また観たい。
ほんとに心から、そう思った映画でした。